トロポミオシンは、284残基400Aの長さのcoiled-coil蛋白質であり、骨格筋、
および、心筋において、トロポニンとともにカルシウム濃度による筋肉の張力
調節に関わっている。1946年にBaileyが本蛋白質を始めて報告した論文中で既
に結晶化が可能なことが記述されていたが、多くの試みにも関わらず、7A分
解能の結晶解析結果が登録されているのみである。これは、トロポミオシン分
子特有の柔軟性が良質の結晶成長の妨げになっているためであると考えられる
が、他方、この柔軟性自体がトロポミオシンの本質的な機能、および、カルシ
ウム調節に関与しているとも考えられれる。
近年、N末端側81残基のフラグメントの結晶構造が2.0Aで解かれ、また、Leu-
Zipper融合蛋白質として254-284までの結晶構造が2.7Aで解かれ、原子分解能
でのトロポミオシンの結晶構造解析の口火を切った。しかしながら、トロポニ
ンコアと相互作用すると言われている機能的に重要な部位、すなわち、Cys190
周辺はこの中に含まれておらず、依然として詳細は不明である。
本研究室では、最近、このCys190を含むフラグメントの結晶構造解析が進行中
である。まだ、完全に解析が終わっていないものの、結晶化が難しい蛋白質を
強引に結晶構造解析する一つのケーススタディーとして、いくつか興味深い点
を含むので、ここにその途中結果を紹介したい。
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